6.その他

<巨大ハサミ>

卵から孵化したばかりのハクセンシオマネキは「ゾエア」と呼ばれるプランクトンで,大きさは1mm以下です.ゾエアは干潟近くの海で成長し,「メガロパ」の段階になると干潟に帰ってきます.

干潟に戻ったメガロパは,すぐに脱皮して稚ガニになります.このときの体長は5mm以下で,まだ,両方のハサミは小さく,巨大ハサミは発達していません.その後,雄ではどちらかのハサミが取れ,残ったハサミが巨大化します.どちらのハサミが取れるかは遺伝的に決まっている可能性がありますが,人為的に片方のハサミを除去すると,残ったハサミが巨大化します.

<捕食者>

 ハクセンシオマネキはいつも捕食者に狙われています.潮が引いている時には水鳥や肉食性のカニ類,潮が満ちているときは魚類が最大の捕食者です.多くの捕食者は,巣穴から出て活動しているハクセンシオマネキを狙います.ですから,彼らにとって,巣穴は隠れ家でもあるわけです.

 熱帯のマングローブでは,ヘビやトカゲなどの爬虫類,ネズミやサルなどの哺乳類までがシオマネキ類を狙っています.そのせいか,熱帯のシオマネキは警戒心が強いようです.

<干潟>

熊本県は,干潟の面積では日本一の県です.有明海・八代海を中心に合計約12,000haもの干潟が広がっています.これらの干潟は,遠目には砂漠か泥沼のように見えます.しかし,人にとっても,そこに住む生物にとっても,非常に重要なはたらきを持っています.

干潟は,遠くにある自然,例えばアマゾンの熱帯林のような秘境ではありません.大変身近な自然です.大河川の流域には平野ができ,そこに都市が発達します.一方,干潟は,平野を通過した川が海に注ぐ場所にできます.したがって,干潟は都市のすぐ近くにある自然なのです.熊本県でも,熊本市や八代市など,大河川の流れる都市の河口には大きな干潟が発達しています.そのため,「干潟は都市の原風景」とも呼ばれています.

しかし,多くの干潟は都市にあるため,「人間生活の影響を最も受けやすい自然」でもあります.1945年には全国で約83,000 haあった干潟が,現在では半分近くに減少してしまいました.そして,その多くは大都市にある干潟でした.また,都市部では,生活排水の流入などによる干潟の悪化も進んでいます

<マングローブ>

 マングローブは,熱帯・亜熱帯の干潟に生育する樹木(約12属60種)の総称です.人間活動によって破壊されていなければ,熱帯・亜熱帯の干潟の60?75%はマングローブ林で被われています.

 日本では,奄美大島以南の河口に大きなマングローブ林が発達しています.主な種類は,メヒルギ,オヒルギ,ヤエヤマヒルギなどのヒルギ類です.

 マングローブ林は餌が豊富なため,魚類や貝類,エビ・カニ類などが豊富に生息しています.特にスナガニ類は豊富で,シオマネキ類の種類が最も多いのもマングローブ林です.