2.巣穴とフード

ハクセンシオマネキが作る構造物には,巣穴とフードhoodがあります.

<巣穴>

スナガニ類の大部分は,干潟に巣穴を掘って生活し,巣穴を中心とした干潟上で活動しています.巣穴の深さや形は種や雌雄によって違っていますが,多くは深さ50 cm以内で,分岐のない単純な形(I,J,Y型)です.

スナガニ類にとって,巣穴は多様な役割を持っています.まず,活動していないときは巣穴内で休んでいます.このとき,巣穴は捕食者や同種の個体から身を守る隠れ家の役割を果たしています.また,干潟表面に比べ,巣穴内は温度や湿度が穏やかです.多くの種の巣穴では,中に水が溜まっていて,巣穴の持ち主は,巣穴内でえらに水を補給することができます.

ハクセンシオマネキを始めとする多くのスナガニ類は,巣穴の中で交尾を行います.これを,巣穴内交尾,または地下交尾といいます.交尾に至る過程は,種によって異なりますが,多くの種では,雄の巣穴内に雌が入り,その後,交尾が行われます.

 巣穴内に,石膏やポリエステル樹脂を流し,それが固まったあとに掘り起こすことで,巣穴の形を正確に知ることができます.

<フード>

繁殖期になると,ハクセンシオマネキの雄の多くは,巣穴の入口に,高さ1?2cmのかまど状の泥の構造物を作ります.この泥の山は,フードhood,シェルターshelter,セミドームsemidomeという名前で呼ばれています.

この構造物の役割については,解明されていない点が多いのですが,次のような説が出されています.@巣穴の日除け,A自らなわばりを小さくすることで,他個体との闘争を減らす,B巣穴の保持者の活動性を示すシンボル,C巣穴の位置を目立たせる目印.

フードは,オスしか作らないとか,大潮の時に作る個体が増えることはわかってきましたが,何のために作るかは現在も研究中で,まだよく判りません.